Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第34章 迷子の恋心《白布 賢二郎》
白布賢二郎、ぱっと見は真面目な優等生っぽい。実際、推薦がとれなくて死に物狂いで勉強して入学したらしい。白鳥沢は県内でもそこそこの進学校だから、スゴい。
が、その白布、なかなかに曲者である。曲者揃いのバレー部の中でも、特に私につっかかってくるのだ。
「先輩って見てて飽きないんですよね」
『何なのよ、もう…っとと!』
言われたそばから柔軟剤のボトルを落としそうになる。しまった、と思って白布を見れば、案の定ニヤリと笑っている。
「本当、面白いです」
『はいはいそうですか。それより部活戻んなくていいの?監督怒るよ?』
「さっき足を挫いたんですよ。テーピングしなきゃなんで、部室まで来てください」
『あれ、珍し。まぁいいや、行こっか』
そうか、それで私を探してたんだね、白布は。平気そうだけど、挫いてるなら歩きにくいだろうな。そう思って手を差し出すと、キョトンとする白布がいた。
『…ん?』
「いえ…あの、いいんですか、手?」
『え、だって…歩きにくくない?』
「まぁ…ありがたいですけど…でもそれだったら肩貸してください」
『あ、そっか。はい、どうぞ』
軽く会釈すると、白布が私の肩に腕を回してきた。うわ、けっこう重たい…白布の腰に手を添えて一歩ずつゆっくり歩く。ひょこひょこと足を引きずる白布の負担が、少しでも小さくなるようにと。
そして少し離れた部室に到着。ど真ん中に置かれたベンチに白布を座らせる。
『待ってね~えぇとテーピングは、と…』
棚から取り出してきた白いテープを持ち、白布の前にしゃがむ。
『足、どっち?』
「右です」
靴を脱いだ白布の足にくるくると白いテープを巻き付けていく。外側に捻ったのかな、ならガッツリ足首固定しとこ。
『っと、はい終わり。キツくない?』
「ちょうどいいです。あざっす」
『うん。じゃあ戻ろうか』
そう言って立ち上がる。早く戻んないとそろそろ監督キレるし…と歩こうとして、腕を捕まれた。振り返ると、じっと見上げる白布。
『……白布?』
「先輩って、瀬見先輩のこと好きですよね」