Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第33章 ★君と俺の8秒間《瀬見 英太》
そうして時間は過ぎ、部活も終わった。帰り道はいつもと同じで、デカい野郎共と女子という異様な光景。
そしてその中でもとりわけ異色を放っているのが、赤いトサカみたいなやつと俺の彼女。
「でさぁ、ここでロー、ガツンといくわけ」
『わかるわかる。ミンゴにガンマナイフするところ超イケメンだった!』
「でも俺的には白熊が好きかな~」
『あー、ベポちゃんカワイイ!』
「でもやっぱ主人公デショ」
『ルフィかぁ…私はやっぱりローかゾロが好きかな。刀ってカッコよくない!?』
"ロー"とか"ルフィ"とか、前にも聞いた覚えのあるワードが飛び出す。これはたしか海賊王とやらを目指す少年の冒険漫画だな。
きゃっきゃと楽しそうに話す蒼井の後ろ姿を眺める俺。と、大平が心配そうに声を掛けてきた。
「瀬見、いいのか?」
「何が?」
「いや…天童と蒼井があまりにも仲が良いと思ったから、つい、な…」
「別に。今に始まったことじゃないしな~」
と言いつつも、内心は穏やかじゃないことこの上ない。蒼井がバシバシ天童を叩いたり笑顔を見せてると、胸の内、さっきと同じところが、やっぱりギュッとなる。
「そうですよッ、盗られちゃいますよ!」
くわっとスゴい形相で見てくるのは五色。その目には"天童さん許すまじ"と書いてあるのがありありと伝わる迫力がある。
「蒼井は天童に気があるわけじゃないだろ。この光景だって見慣れたし、な」
ちらりと視線を前に戻す。今度は"赤司くん"だの"黒子っち"だのと登場人物の名前が日本人になってる。これはあれだ、バスケの。
2人の会話に耳を傾けていると、隣の五色がほおぉぉぉっ!と奇声を上げる。横目で窺うと、目をキラキラと輝かせる後輩。
「瀬見さん、俺、尊敬しますッ!」
「はいはい。その前にお前はクロスの練習」
「うぐっ…」
「そんなんじゃ若利を越えるなんて、夢のまた夢なんじゃないのか?」
少しからかうように言う大平。そうだな、と苦笑するとみるみる五色が炎を上げる。そして今日一番のスマイルで言った。
「そうですよね!俺、走って帰ります!」
さよおならあぁぁぁ…と見事なまでのドップラー効果を残し、五色は走り去っていった。
「瀬見、五色はどうしたんだ」
「お前のせいだろ、若利」
「なんのことだ?」