Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第33章 ★君と俺の8秒間《瀬見 英太》
ったく、若利のやつ、天然にもほどがあるだろ…誰のせいで五色がああなったんだよ。これが試合で強いとか、分かんねぇ…
五色の走り去った方向と隣のエースを見比べてはぁっとため息を吐く。と、前を歩いていた蒼井が声を掛けてきた。
『ね、英太、これから覚の家行っていい?』
「天童の?なんでまた」
「この前貸したマンガの続きを読みたいんだってさ~。英太クンも来る?」
英太クンも来る?っつか。彼女を若干怪しい同級生と2人にとか、できねぇだろ…
「分かった、俺も行く」
『やった、ありがと英太、覚!』
無邪気に喜ぶ姿は、本当に高校生には見えない。あぁクソ、やっぱりかわいいな。
そっから天童の家に向かい、本を読むこと小1時間。今月号の月バリを読んでると、隣に座って読む蒼井がこっくりこっくりと船をこぎ始めた。
「このシーンが…って、海宙?」
『ん…眠たいぃ…』
ん~っと唸りながら、目をごしごしとこする蒼井。英太、帰ろ?と見上げてくる蒼井の目は、とろんとしている。
「えぇー、帰っちゃうのぉ?なんなら泊まっていけばいいのにさぁ。ね、英太クン?」
「ね、じゃねーよ。普通に帰るわ」
「そっかー。ま、帰り道気を付けてヨ」
『あ、覚、この続き借りてもいぃ?』
「持ってきな~」
蒼井は天童から数冊のマンガを借り、大事そうにリュックに入れた。おじゃましましたー、と天童の家を出る。時計を見れば9時半。こっからだと蒼井の家は30分かかる。
「蒼井、俺んち泊まってくか?」
『ん~、でも迷惑じゃない?』
「いや、全然。それに家に親いないし」
『じゃあお言葉に甘えちゃおっかなー』
にこりと笑う蒼井。それから俺の手をぎゅっと握り、ぶんぶん振りながら歩く。ふと立ち止まったので何かと思ったら、ぎゅーっと真正面から抱き付いてきた。
『英太…あったかぃ…』
「蒼井も、だぞ?」
ふむ、眠たいと、甘えたになるのか。
また1つ、君を知って、好きになった。