Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第32章 ★男前な彼《岩泉 一》
部屋に戻って蒼井の分の布団を敷く。それから部屋着に着替え、ベッドに寝転がって月バリを読むこと数十分。コンコンと控えめなノックが聞こえた。起き上がりながら言う。
「おう、入っていいぞ」
『お、おじゃまします…』
そろそろと入る蒼井。しっかり乾かしてないのか、まだ髪はしっとりしている。座るように促すと、蒼井は俺の前にちょこんと正座した。
『あの、岩泉のお母さんと話したんだけど…』
「泊まってけ、ってか?」
『うん、だからあの…』
よろしく、お願いします。ぺこりと蒼井はお辞儀する。その頭をそのままよしよしと撫でる。すると、グスッと鼻をすする音が聞こえた。
「隣、来るか?」
『ん…』
べそべそと泣きながら蒼井は俺の隣に座ると、ぎゅっと抱き付いてきた。
「怖かったよな。もっと早く助けてやればよかったな、ごめんな…」
『んーん…っ岩泉は、悪くなっ、もん…』
腰に腕を回してくる蒼井。あのクソヤロウから守ってやれなかった自分が不甲斐ない。気持ち悪かったろうに、怖かったろうに、俺は何もしてやれなかった。
俺が罪悪感を感じていると、蒼井がくいくいとシャツの裾を引いた。
『ねぇ、岩泉…』
「なした?」
『なんも…てか、あの…』
もじもじする蒼井。怪訝に思っていると蒼井が俺を見上げた。耳まで赤くなってるし、何を恥ずかしがってんだ?
『き、今日、一緒に寝ても、いい?』
「………は?」
思わず間抜けな声が出る。俺だって一応高校生でそれなりに欲もあって。で、一緒に寝てもいいって、それは…
「え、誘ってんのか?」
『なっ、ちっ違うよ!アイツに触られたまま寝るのとかなんか気持ち悪いし…岩泉が隣にいるって分かるなら安心、かなって…』
「そういうことなら、俺は別にいーぞ?」
よかった、と蒼井は心からの安堵の表情を見せた。そんなの見たら邪な気持ちなんてどっか行っちまった。それから照明を1段階落として布団に寝転がった。