Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第32章 ★男前な彼《岩泉 一》
【岩泉 side】
ぐすぐすと鼻をすする蒼井の腕をぐいぐい引いて歩く。ああ、今が夜でよかった。じゃねーと俺が悪者みたいだ。それに泣いてる蒼井を見られたくない。
『岩泉っ、どこ、行くの?』
「俺んち。蒼井の家より近いし、それより早くフロ入りたいだろ?」
俺の言葉にこくんと頷く蒼井。その小さな手を握り直し、家へと早足に向かった。
家に着くと、俺のジャージとタオルを押し付けて蒼井を風呂場に押し込む。と、蒼井に腕を掴まれた。見下ろすと、じぃっと見上げる蒼井と目が合った。
『岩泉、あの…』
「時間かけてゆっくり入れ。それとシャンプーとかは適当に使っていいから」
『うん、分かった。それと、あの…』
「ん?」
『助けてくれて、あり、がと…///』
「っ、おう…///」
ふにゃっと笑う蒼井がかわいくて、顔が赤くなるのを感じた。それからゆっくりしろよ、もう一度言って、脱衣場を出た。
部屋に戻ろうとして、母さんに捕まる。
「はじめぇ、あの子どうしたのよ?」
「あー、っと…」
なんて言おう?痴漢に触られて、なんて言える分けねぇし…あ、分かった。
「バイト中にずっこけて、ビールしこたま浴びた。で、俺んちのが近かったから連れてきてシャワー、と思ったんだけど…」
ずっこけ、てはいないが、ビールを浴びたのは間違いではない。すると母さんは納得したのか、それ以上追求してくることはなかった。
「そうなの、可哀想ねぇ。あ、夜も遅いんだから泊まっていってもらいなさいよ」
「おう」
母さんに感謝。理解の早い親でよかったと心から思う俺であった。