Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第3章 高嶺の花だとしても《岩泉 一》
「家、どっちだ?」
『えと、駅の方。あのスーパーの近くの』
「あっちか、なら送ってけるな」
バッ、とカサを開いて蒼井を隣に入れる。普段は歩くのが早い俺だが、今日ばかりはゆっくり。彼女に合わせよう。
とりとめの無い話をして、歩く。雨の音、カサで弾む水音がBGM。
『雨、止まないねぇ…』
「今夜いっぱい降るとかって…」
歩いている内に、蒼井の家近くのスーパーまでやって来た。十字路を右に曲がり、道を進む。この辺はあまり来たことがない。
キョロキョロしながら歩いていると、蒼井が俺に寄って来た。フワリ、とシャンプーの香り。また、それとは違った甘い匂い。
ビックリして見ると、蒼井がほんのりと顔を赤くしていた。
『え、あの、ごめんね。私が濡れないようにカサさしてるみたいだから…岩泉君の右肩濡れちゃうかなぁ、って』
なるほど、そういうことか。確かに蒼井が濡れないようにしている。カサのサイズ的に俺がはみ出るが、しょうがないと思っていた。
優しい…
「蒼井が嫌じゃねえなら、このままでいいか?」
『うん。カゼひいたら困るしね』
彼女は目を細めて笑った。やっぱり、笑った顔が一番似合うと思った。