Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第1章 マイヒーロー《日向 翔陽》
あの男子は、誰だったんだろう。
あの後ろ姿を見てから1週間。私の頭の片隅には、いつも彼の事があった。
親友の茜(あかね)には、声を掛けてみれば?って言われた。でも引っ込み思案な私には、話しかける勇気すら無し。
教室でイスに座り、ぼけーっとしていると、茜に声を掛けられた。
「海宙、どうしたの。目が一点ボケしてるし、机がスゴいことになってるよ?」
『…はっ、うわ、何コレ!?』
ぼーっとしている間に、シャーペンを握っていた。しかも、ずっとカチカチやってたから、折れた芯が机の上そこかしこに散らばっている。
「次の授業、理科室移動だよ?」
『ごめん、片付けてから行くから先に行っててもらっていい?』
茜に先に行ってもらって、机に散らばる芯を片付けた。それから授業道具を持って理科室に向かう。時計を見ると、あと3分くらい。走らないと間に合わないじゃん!
慌てて荷物を抱えて教室を飛び出す。全力で廊下を走っていると、曲がり角のところで誰かにぶつかってしまった。
「ってーな、何すんだよ!?」
『わ、ごごごごめんなさい!』
それは、1年生の中でも特に態度が悪いと言われる男子3人だった。しかも、私がぶつかったのが、その中心の男子。
「おい、痛えよ、慰謝料払えって」
『え、でも、ぶつかっただけで…』
「あぁ!?」
『ひぃ、ごめんなさい、ごめんなさいっ!』
凄まれて、情けない声が出る。相手の男子が手を振り上げる。怖くなって、思わず目を固く瞑った。
「何してるんだよ」
凛とした声にハッとして目を開く。そこには第2体育館にいた、彼の姿があった。