Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第1章 マイヒーロー《日向 翔陽》
【side 蒼井】
私が通う烏野高校は、小高い丘の頂上に建つ県立高校だ。
様々な部活動があり、4月の入学シーズンには各部が新入生の勧誘を必死に行っている。
私は勿論、美術部。中学でも美術部に入っていた。それに、絵を描くのが好きだから。
自分の思うままに表現できる。鉛筆やクレヨンや絵の具。色々な道具を使って、思い思いの絵を描くのだ。
無心になって絵を描く時間。
それが、私の最近の、お気に入り。
* * * * * * * * *
入学後、すぐに入部届けを出して、1ヶ月。それから私は部活三昧の日々を過ごしていた。
今、私は校舎の周りを歩いている。…というのも、今月の課題が"自然"なのだ。
葉桜でも、菜の花でも、たんぽぽでも。何でも良いから春らしいものを絵にしろ、とのことだった。先生も雑だ…
題材を探し、うろうろしていると、元気な掛け声が聞こえてきた。それと、ボールが床を弾む音。
その音に惹かれるように進むと、そこには第2体育館があった。
じゃまをしてはいけないと思いつつも、音の正体がとてつもなく気になる。好奇心に負けた私は、開け放たれた扉から、そっと中の様子を窺った。
ネットを挟んで向かい合う男子たち。
上がったボールに一直線に跳ぶ男子。
オレンジに染めた髪と、
黒いジャージのコントラストが眩しい。
ドッと音がしたかと思うと、男子の手がボールの芯を捉え、床に叩き付けたところだった。
小さくて、でも、力強くて。
その後ろ姿に、一瞬で、心を奪われた。
これが、私が初めて彼を見た日の事。