Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第12章 過去にサヨナラ《赤葦 京治》
そして、披露宴の前日。スケジュールの最終確認を行い、部屋に戻る。
ガチャリと開けば、ベッドと空っぽの棚だけが置かれた、殺風景な部屋。ここで、私は18年もの年月を過ごしたのだ。
「お嬢様、本日は明日に備えてごゆっくりおやすみください」
『京治、ちょっと来て』
「お嬢様?」
ベッドの縁に腰掛け、京治にちょいちょいと手招きをする。頭に疑問符を浮かべながら、隣に京治が座った。ギシッ、と2人分の重みでスプリングが軋む。
『京治、12年間、本当にありがとう』
京治に向き合って言うと、彼は苦笑した。
「お嬢様、それを言うには1日早いかと思いますよ?」
『だけど、今伝えたかったの』
2人っきりで会えるのは、きっとこれが最後になるから。
『明日になったら、私は木兎家の1人として生きていくわ。だから、蒼井海宙として京治と話せるのは、これが最後なの。だから、言うね?』
最後の最後まで引きずってしまったけど、
ちゃんと伝えよう。
『京治、大好きよ…』
「お嬢様…っ!」
京治の目が見開かれる。
私、笑えてるかな?
貴方が好きだと言った笑顔で、笑えてる?
ごめんね、京治。
貴方を困らせることをして。
それでもね、
伝えたかったのよ?
『貴方が…っ、大好き、です…』
そこ言葉は、涙と同時に、ぽろり。零れた。