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Volleyball Boys 《ハイキュー!!》

第12章  過去にサヨナラ《赤葦 京治》



それからの日々は、あっという間だった。それは、披露宴に向けての準備が大急ぎで始まったからで。京治といられる日々のカウントダウンでもあった。

ウェディングドレスは白で、シャンパンゴールドの装飾を施したものになるらしい。シャンパンゴールドは、Owl Group のイメージカラー。木兎さんの息子さんの、光太郎さんもそんな色のイメージだそう。

慌ただしい毎日の中で、私の部屋の荷物の引っ越しも行われた。新年からは木兎さんのお家で過ごすことになるらしい。

「余計な物は置いていきなさい。お前は光太郎君と新しい人生を歩むのだからな」

『…はい、お父様』

そう言われたら、置いていくしかなかった。お気に入りだった人形も、たくさんあった大事な本も。全部、全部置いていこう。

想い出は、必要無いんだから。

ふと、本と本の隙間に何かが挟まっているのに気付いた。取り出してみると、それは1枚の栞だった。

『この栞って…』

4つ葉のクローバーと桜の花びら、それが画用紙の上にラミネートされている。一見すればただの栞。それでも、私にとっては特別な1つだった。

『京治の、初めてくれたプレゼント…』

家に来て間もない頃、本が好きだった私のために、わざわざ作ってくれたものだった。

ぽろり、と溢れた。視界が滲んでぽろぽろ、ぽろり。両目から涙が止まらない。

『けぇじぃ……っく、うぇ…ひっく…』

泣くのはあの日限りにしたつもりだったのに。こんなにも涙腺とは脆いものなのか。

『けぇじ…好きぃ…っひく、好きだよぉ…』

私は栞を胸に掻き抱いて泣いた。

伝えるのは簡単なのに、

どうしても伝えられなかった。

私の、彼への、想い。


     
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