Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第12章 過去にサヨナラ《赤葦 京治》
その日の夕食は、珍しくお父様も同席していた。長い、長いテーブルの両端に、私とお父様は向かい合わせに座った。京治は、私の横についている。
白いお皿に盛られた、ラム肉のソテー。それとナイフで切り分け口に運びながら、お父様に話し掛けた。
『お父様もいらっしゃるなんて、とても久方ぶりですね。食事が美味しいですわ』
「ふふ、そうかな。今日は海宙と京治君、2人に大事な話があるんでな。京治君には既に話したことなんだが…」
お父様は語尾に向かうにつれ、苦虫を噛み潰したような、渋い顔になった。そんなに悪いことなの、言いにくいことなの。私の心に、不安が影を落とす。
『なんですの、お父様?』
「実は…結婚が決まったんだ」
『まぁ、素敵なことですね。して、どちらの方がご結婚なさるのかしら?』
「お前だよ、海宙」
『えっ…?』
お父様は、今、なんて…?
「お前も知っているだろう、社長として有名な木兎さんのことは」
名前は聞いたことがある。木兎さんというのはある会社の社長の名前だ、有名な食品メーカーの創設者で。でも、その木兎さんと私になんの関係が…?
「木兎さんのご子息、光太郎君がちょうど良い年らしくてな。いずれその地位も継がせるらしいが、若いうちに嫁を貰っておきたいとのことだった」
待って。
その先は聞きたくない。
お願い、言わないで、お父様…っ!
「急な話だが、今年の12月、お前の誕生日に会わせて披露宴を行うことになった。海宙と光太郎君の、な…」
カシャンッと、フォークが手から滑り落ちた。京治が拾い、新しいものに取り替える。でも、それを使う気にはならなかった。
私は精いっぱいの明るい声といつもの笑顔で笑ってみせた。
『分かりましたわ、お父様。Owl Groupにとっても景気の良いお話ですものね。喜んでお受けいたします』
「すまないな、お前にばかり苦労を掛ける」
そんなこと、ないのに。
お父様が頑張ってるのは、
私が1番、知っているもの。
ナフキンで口を拭い、ペコリとお辞儀をし、広間を後にした。