Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第12章 過去にサヨナラ《赤葦 京治》
18歳の9月のある日。5年が経った今でも覚えている、色褪せない想い出。
ふかふかのベッドに寝転んで、アルバムのページを捲る。コンコン、とノックの音と、聞き慣れた声が耳に届いた。
「お嬢様、入ってよろしいですか?」
『良いよ~』
失礼します、と言って京治は部屋に入ってした。白やピンクを基調とした女の子らしい部屋の中央に、2人掛けのソファ。その前のテーブルに京治はトレイを置いた。
アンティークのティーポットにティーカップが2つ。それと、イチゴののったショートケーキも2つ。お茶の用意をしながら、京治は私を見て苦笑した。
「お嬢様、シワになってしまいますよ」
こぽこぽと紅茶が注がれる。白い湯気が宙をたゆたい、優しい匂いが漂う。
『平気よ。それより見て、可愛いわねぇ!』
アルバムを片手に京治の隣に座る。そこには幼い頃の2人の姿が。京治は目を細めて、懐かしいですね、と言った。
ピアノのコンクールで金賞を取った時。
テストで満点を取った時。
京治が来て初めての誕生日の時。
転んで泣いてる写真まであった。
『ちょっと、これ撮ったの誰なのよ!?』
「ああ、木葉さんですかね…」
木葉さんというのは、京治よりも早くに来ていた執事さん。私とお父様に仕えてるクセに、"俺の主はお前じゃねえ、お前の父上さんだよ"とか言って、意地悪してくる。
あの人はS属性が付いてるから、こんな写真を撮っていたとしても不思議じゃない。
『木葉さんめ…』
「今に始まったことじゃないですから…」
恨めしそうな顔で写真を睨む私。京治はその頭をぽんぽんと撫でて、他の写真を見るように促した。
「こっちのお嬢様なんて、可愛いですよ」
『本当だわ、この京治も、寝てて可愛い』
2人で寄り添うように寝る写真。小さいとどんな子でも可愛く見えるのは、不思議だ。でも、写真をみるのに夢中で、全然気付かなかったの。
京治が、すごく辛そうな顔をしているのに。
今にも泣き出しそうだったのに。
あの時気付けていたら、
未来は少しでも、変わってたのかな?
なんて、今の私は後悔してるの。