Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第10章 ★アナタとワタシ《影山 飛雄》
ぱかりと海宙が弁当箱の蓋を開く。からあげやミニトマト、ブロッコリーなどのおかずが、色鮮やかに飾る。
『ん、たまごやき成功。おいひ~!』
「1コもーらい」
ヒョイと黄色いそれをつまみ、口に放り込む。懐かしいような、優しい卵と出汁の味。俺はガキの頃からコイツん家のたまごやきが好きだった。
『食べたなぁ、私ももーらいっ!』
俺の食いかけのメロンパンをグイと引き寄せて、パクリと食べる。満足そうに笑うその頬には、パンの欠片がついている。
「パン、まだいるか?」
『じゃあ、あと1口。でも飛雄は…?』
「俺はこっち貰うから、いい」
彼女の唇の端に口を寄せ、パンの欠片をペロリと舐めとる。そしてそのまま彼女の唇をいただく。
『なにすっ、とび、バッ…っ///』
何すんの、飛雄、バカ…か。
真っ赤になって狼狽える彼女が可愛くて。
俺は珍しく、純粋な笑みを浮かべていた。
ヒュウ、と風が吹く。日に当たると茶色に見える彼女の髪が舞う。後れ毛を耳に掛けそっと呟いた。
「海宙、好きだ…」
『わ、たしも…飛雄が好きだよ…///』
恥ずかしそうにはにかみながらも愛を囁く海宙。
―――この時はまだ、問題なかった。