Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第10章 ★アナタとワタシ《影山 飛雄》
一応、脱出を試みる。ドアノブに手を遣り、グッと力を込める。ガキッ、と音がして、ロックされていることを告げる。
『やっぱ、ダメか…』
どうしようもできない状況に、焦りが募る。そしてそんな心境とは裏腹に、人間、減りたくなくても減るものがある。
きゅるり、と。お腹が鳴った。
仕方無くラップの掛けられたサンドウィッチに手を伸ばす。パクリ、と口に含めば柔くて甘いパンの味。それからハムの入ったポテトサラダ。ああ、美味しい。
2つほど食べたところで、ガチャリとドアが開かれた。その姿は部活でもあったのか、学校指定のジャージを身に纏っている。
『あ、飛雄…』
「お、起きたか。それ、食ったか?」
私を閉じ込めた主は、何食わぬ顔でそう言った。それからゆっくりと近付き、床に座る私に目線を合わせようと、しゃがむ。
その手を伸ばし、優しく――そう、ガラスに触れるが如くに――頬を撫でた。
「ただいま、俺の海宙…」
いつもと変わらない声でそう告げた。自身の唇を、私のそれに重ねる。一瞬、びくりと私の肩が跳ねる。飛雄はそれに気付かないふりをして、すぐに離れた。
体が、思うように動かない。身がすくんで、動けない。私は喉から声を絞り出すように言った。
『おかえりなさい、飛雄』
ワタシをアナタに縛り付けるのは
銀の鎖か
それとも―――