Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第9章 Are you ready?《黒尾 鉄朗》
ファミレスに長居しちゃったので、店を出た時には9時を回っていた。
『あちゃー、ママ怒るかな…』
「なに、お前ん家厳しかったりする?」
マズいことしたかな…と頭をガリガリ掻くクロくんに、慌てて弁解した。
『ううん、違うの。今日はスマホの電源切れちゃって、連絡できなくて。ママ、心配してるかもしれないから』
「そーゆーことか。なら、俺も行くわ」
『へ、どこに?』
「お前の家、説明してやんねーと、だろ?」
クロくんはいたって大真面目な顔で言うもんだから、キョトンとしちゃった。
「じゃーなー、朝練、遅れるなよー!」
クロくんはみんなにそう言って、手を振り、それから私の背をぽんっと叩いた。
「ほい、けーるぞー、つーかどっちだ?」
『あっちです、駅の方に向かって…』
分かった、と短く答えると、スタスタと歩くクロくん。彼の一歩は大きく、しかも速いもんだから、私は小走りになった。それに気付くと、クロくんはフッと笑い、ペースを落としてくれた。
あれ?
クロくんってこんなに優しかったかな?
前を向く彼を、ちらりと窺う。不思議な髪型(寝癖だと言っていた)、切れ長の双牟、Tシャツの襟元から覗く鎖骨、それから高い位置にある腰、そこから伸びる脚。
あれれ?
クロくんってこんなにカッコ良かったの?
じぃっと食い入るように見詰めていると、クロくんはニヤリと笑い、見下ろした。
「なに、俺に見惚れちゃったとか?」
『なっ、ちがっ、そんなんじゃ…っ///』
上手く言えたか分からない、だって。
街灯に照らされた彼が、いつもよりもカッコ良く見えた気がしたから。思わず、赤くなってたかもしれない。
気付かれていないことを願いつつ、街灯と月明かりの下、帰り道を辿った。