第1章 はじまり
「で、近藤さん。
俺を呼んだのはこのガキについてか?」
松平の背中に礼をしたまま動かない近藤に土方は声をかけた。
「ああ、そうだ。トシには一番に言わなきゃならねぇって思ってな‼
とっつぁんがここで働かせてやれって頼みに来たんだ」
「・・・そうかよ・・・」
土方は懐から煙草を取り出して火を着けた。
フゥーっと吹き出された紫煙はゆらゆらと登り、やがて消えた。
「おいガキ、自己紹介しろ」
土方はそれまで微動だにしなかった女の子(彼曰くガキ)に目を向けた。
「あ、はい‼です‼
趣味は読書と食べ歩きです‼
おお、お願いしますッッッ‼‼‼」
「ちゃんには、副長補佐をやってもらう事にした。トシ、頼むぞ」
土方は、ああ、と言いかけて慌てて停止していた思考回路を通常運転に切り替えた。
「はァァァァァァァ?!何でだよ⁉」
「だってこの前、すげぇ忙しそうだったからさぁ」
この前とは何時か?
土方には思い当たる節が無かった。
しかし、近藤はもうを副長補佐にすると決めた様だ。覆る事は無いだろう。
諦めた方が特だと早々に悟った土方は煙草の火を消してに向き直った。
「おいガキ、俺ァ土方十四郎だ。
これから宜しく頼む」
「ここ、こちらこそですっ‼宜しくお願い致します‼‼‼」
こうしては副長補佐になったのであった。