第4章 続・恋人
「えっいいの?」
「えっ、だめなの?」
「ううん、良かった、アリガト」
「お弁当のおかず、リクエストある?」
「おいしいもの」
嬉しい、なんだか彼女って感じ。
「任せて!」
リョーマくんの手が頰に触れる。
温かい手に安心感と緊張が生まれる。
リョーマくん瞳にうつる自分が少し揺れた。
この表情、1番好きかも。
「いつまで目、開けてんの」
「リョーマくんのその顔、好き」
思ったまま言うとリョーマくんの頰が紅く染まる。
「じゃあ、目開けてて」
「んっ」
唇が重なる瞬間に目を開けているのって、難しい、つい閉じそうになる。
座り直し手を繋ぐと、さっきより体温が上がっているような気がした。
「応援来る時、眼鏡外してきてくれる?」
「え!」
「学校の奴、気付かないでしょ、どーせ」
「うーん、そうかなぁ?」
「あ、でも来る途中でナンパとかされないで」
「え!?それは私に言われても…」
こんこん
ノックが聞こえ、はーい、と返事をした。
「もうすぐ着くみたいよ、準備してね」
「はーい」
今度はリョーマくんが返事をする。
「じゃあ、考えといてね」
「うん、分かった」
私の髪を指に絡ませ毛先にキスを落とすリョーマくん。
私の髪、好きなのかな。
もう一度私にもキスをして、ふ、と微笑む。
綺麗な顔。
美人、と言ったらリョーマくんは怒るかもしれないけど、 美しい人と書くのだから美人であってると思う。
「なに」
「ん?綺麗だなぁと思って」
「夢子の方が綺麗な顔してるよ」
困ったような笑い方は、なんだか胸がきゅんとする。
眉尻が少し下がるリョーマくんの表情は、学校では一度も見たことのないものだった。
「その顔も、好き」
「ふーん?オレ、どんな顔してる?」
「困ったように笑ってる」
リョーマくんがさらに困ったような顔になる。
「夢子がメンクイなのは分かったけど、やっぱり試合とか呼ぶのやめようかな」
「え!なんで!?」
「まぁ、来たら分かるよ」
「ふーん…?」
そんなに格好いい人が多いのかな?青学があれだけ美形揃いだから、人がたくさん来るとか?
首をひねる私の手を引いて立ち上がる。
お母さんと私に見送られて、リョーマくんはリョーマパパの車に乗り込んだ。