第1章 クラスメイト
「ずいぶん余裕だね」
越前くんの顔が近付く。緊張が走ったがそのまま目を閉じた。
顔を離すと何故か越前くんが困ったような顔をしていた。
「どうしたの?」
「…」
黙る越前くん。
「越前くん?」
何か考え込む表情をする越前くん。
「あ、名前で呼んでよ」
「え!?」
唐突な要求に身が固まる。
「いきなりは…無理だよ」
「でも、今日から俺の彼女でしょ?」
面白がるように私を見る越前くんは、もう赤い顔をしてなくて、少し悔しくなる。私ばかりドキドキしてる。悔しい。
「…リョーマくん」
「うん、なに、夢子」
急に名前を呼ばれ、動悸が激しくなった気がした。私、今日死にそう。
「なんでもない…」
越前くん…じゃない、リョーマくんは私をもう一度ぎゅ、と抱き締めた。
「送る。帰ろっか」
「うん」
クラスの、いや、テニス部の王子様は私の王子様になった。