第14章 テニスと王子様
「リョーマくんのこと…」
リョーマくんのことを考えると、はじめに浮かぶのは、教室で一目惚れした時の顔。教室に差す日差しに目を細め、ふとこちらを見るリョーマくん。
綺麗な顔は私を見つめて、ふ、と笑って「まだまだだね」と言う。
「どう?」
「そうですね、気にしないように、します。リョーマくんは私を好きなんですもんね」
自分にも言い聞かせるように言うと、「まぁ、無理に考えないようにする必要はないと思うわよ」と先輩が笑った。
「夢子は真面目だから、なんでも真面目に考え過ぎるのね。不安になったら全部話すのがおすすめよ。超能力者じゃないんだから、言葉にしないとなにも伝わらないわ」
「はい」
言葉を惜しまないこと。それは私が決めたことのはずだった。
「ちょっと元気出たみたい?」
「あっ、はい、ありがとうございました」
今度は自然に笑える。
難しいことは何もなくて、私は、私と、リョーマくんのことを考えれば良いのか…。
眼鏡をやめてから少しだけクラスメイトが遠巻きになって、心細かったのかもしれない。
明日はもう少しだけ素直になろう。