第49章 life
数年ぶりに見た僕の好きな人。
遠くても分かるよ。
だって…ずっと会いたかったんだもん。
引退してからは、業界の人とも一切会ってないらしい。
だからこそ、会えたことが凄く嬉しかった。
「あやめさん!」
「お久しぶりです。」
駆け寄れば、一瞬驚いた顔をするものの懐かしい笑顔を向けてくれる。
「ご無沙汰しちゃって、ごめんなさいね。」
「ノブくん、相変わらずお忙しいようで。」
「活躍は、テレビで拝見してますよ?」
「ヤダなぁ…敬語なんて使わないで下さいよ…」
「久しぶりだから…ついね?」
眉を寄せながら、困ったように笑う姿に愛しさがこみ上げる。
「えっと。言うの遅くなっちゃったんですけど…」
「おめでとうございます。」
視線をお腹へ向けながら、祝福の言葉を発する。
「ありがとう。」
今度は、溢れる笑顔にこちらまで笑ってしまう。
「あと少しすれば、会えるのよね?」
お腹を擦りながら、話しかける姿に目が逸らせない。
「会いに行っても…良いですか?」
不意に出た言葉に自分でも驚く。
「えっ…あっ…うん!会いに来てあげて?」
「はい!ありがとうございます!」
ピシッと姿勢を正して、返事をするとあやめさんは口元に手を当てながら笑ってくれた。
貴女の笑顔を見られただけで、大収穫です。
会えて良かった。
これで前に進めます。
ありがとうございます。