第6章 一人目の闇 ~2~
ケット・シーの探す彼女は、砂漠をじっと見つめていた。
「ルイさんがあないなこと言うなんて、思ってもみませんでしたわ」
おどけたような声に、ルイはゆっくりと振り返り、苦笑する。
『私だって、あんなこと言うつもりはなかったわよ』
でも、なんでだろうね。
『あの人たちには、嘘が付けない』
ケット・シーは、ようわかります、と大きくうなづきながらルイの隣に立つ。
「皆はんは、自分たちの行く道が正しいと信じとるんでしょうね。後ろを省みることが、時には必要だということも、まだ理解しておらへん」
勝者の下には、かならず敗者がいる。
それと同じだ。
神羅の起こした事件によって、得た実績もあれば、失われたものもある。
バレットたちの起こした、魔晄炉爆破によって、防げたこともあれば、失われたものもある。
それから目を背けていては、何も守ることはできない。
『私も、向き合わないといけないのよね…』
4年前、ルイはルイの中にあった小さな世界を失った。
愛するものを一気に失くし、何が正しいのか判断することができなくなった。
今でも、誰が正しいのかなんてわからない。
だが、これだけはわかっていた。
それは
『誰も悪くない』
きっと、クラウドにも、ティファにも、バレットにも、レッドⅩⅢにも、ケット・シーにも
敵に見えているものがある。
その存在が、ルイには敵だとは思えないのだ。
その存在が、悪いわけではないとルイは知っているのだ。
『誰も悪くないからこそ、みんな苦しむんだろうな』
みんな…が、誰なのかルイにはわからなかった。
ただ、そのみんなの中に
自分が入っていることはわかっていた。