第6章 濡れないように
「っ?!」
「これでいいでしょ」
おもむろに傘を持つ手を逆にしたと思ったら、空いた左手で私の肩を寄せられた。
ほとんと、真顔で(しかも唐突に)こういう事するからびっくりするよ…。
お返し!
「…こうすればいいよっ!」
「…!」
私は駆にドキドキさせられた分を駆に返す気持ちで、駆に抱きついた。
どうかな。ドキドキしたかな…?
ドキドキさせるはずが、更に私がドキドキする。
なぜだ。
「これ、持って」
「へ?あ、うん」
私の目の前に傘の柄を付き出す駆。
急だったのでほぼ反射的にその傘を握る。
私が傘を受け取ったのを確認すると、駆の姿が私の視界から消えた。