第5章 かっこいい姿
「俺、伊織にしか恋してないし、かっこいい顔も、かっこいい言葉も、伊織以外にはしないし、言ってないからね!してるのは、その"演じてる人物"だからね!」
人差し指をびしっと付き出して、そう言われる。
私、何でこんなに力説されているんだろうか…。
「…。じゃあ、ドラマみたいなあまーーーーい言葉。言ってくれたらいいよ」
素直に従うのはなんだか納得しなくて。
ちょっとからかってみようと思った。
遊都は、えぇっ?!って言ってたけど、深呼吸している。
本当にやるんだ。←
「ふぅ…」
深呼吸が終わったみたい。
一息つくと、急に遊都に抱きしめられた。
「?!」
「伊織」
突然のことに体が跳ねる。
「俺には、伊織だけだから。俺絶対、伊織以外好きにならない。いや、なれないと思う。ドラマで、色んな女優さんと知り合ったし、ドラマの中で色んな人と恋愛したりしたけど。やっぱり、俺には伊織以外考えられない」
そこまで言うと、遊都は体を話してふっと微笑んだ。
「ごめん。やっぱり俺、セリフじゃないと考えまとまらなすぎてダメみたい…」
目の前にいるのは、本当に俳優なんだろうか…。
ドラマでは完璧でも、私の前ではこんなにボロボロの遊都。
そういう姿を見せてくれるのも、彼女の特権なんだろうな。
かわいそうな遊都の姿に免じて許してやろう。