第6章 倉元とランチ
お昼はここのランチにCCGの職員が人がよく来ている。
今日はクリームパスタとサラダのAランチ。
これで500円なんだから恐ろしい。
倉元も同じものを頼んでいるけどたぶん少ないんじゃないかな。
こいつは夕方くらいにデザートを食べ始める男だけれども。
「才子ちゃんの音源聞いてシュミレーションしとかなきゃいけないな。」
『ねえ倉元、それ私と同じ声になる予定なんだけど。』
「うん……。」
どうすんだと頭を抱える倉元。
「でも本番で初めて聞いて動き合わせるとか…。」
『出来ない。』
「だよね〜〜。」
倉元は毎晩私の声に調整された女の喘ぎ声を聞いてシュミレーションするのか、私で。
それってもうおかず私ってことじゃない?
もう倉元それアウトじゃない?
男ってそのへんどんな感覚なんだろ。
「うん、やっぱ本番で俺が完璧にリード出来るように考えておく。」
『…私のこと性的な目で見ないでね。』
「あのねぇ…うーん…。」
曖昧な顔で笑われた。
倉元からは少なからず好意を抱かれていると思う。
この関係を友達以上だと思ったことはないが、それ以上の感情が向こうから向けられているかどうかは分からない。
フォークにパスタを無限にクルクルと巻きつける。
「…大丈夫?」
目だけで倉元を見ると、うっすら開けられた細い瞳とぶつかった。
『倉元は私とそういうことできる?』
トマトを咀嚼して水で流し込んだ倉元が難しい顔をして口を開いた。
「俺は男だからね。」
そりゃそうだ。
抱けないくらい酷い容姿でもないし。
有馬さんがどっちかというと私としたいと答えたのと何ら変わりのない答えだ。
「でもユウが他の人とやってたら嫌だなとは思うかな。」
『丈さんでも?』
「なんでそこにタケさん出てくんのよ。嫌だなぁ、男として完敗じゃん。あ、でもハイセとの方が嫌かも。」
『なんで?』
「だって歳も近いし地位も一緒だし…ハイセかっこいいし。」
何を想像したのか郡さんは〜とかブツブツ言い始めた倉元を眺めながらパスタを食べきった。
夜はシャトーでご飯だ。
「あ。」
『なに。』
「いいこと思いついた。」
今からセックスしますみたいな雰囲気で家に入っていけば目視で確認取らなくても声だけで釣れるんじゃない?
つまりヤってるみたいな動き取らなくてよくない?