第2章 はじまり
「行ってきま〜す!!」
「夕飯までには戻ってくるのよ、華」
「は〜い!」
華と呼ばれた少女はそう言うと飛び跳ねるように家を出ていく
まだ六つか七つほどの見た目の少女が向かうのは、1日のほとんどを過ごす自分だけがしっている秘密の場所
女の子なら普通は持っていないであろう木刀を片手にしばらく走ると、だんだんと行き交う人が少なくなっていき林が見えてくる
林に入り目印を頼りに奥へと進んで行くと開けた場所に出る
華はそこで立ち止まると、走ったせいで少し乱れた息を整えた
ここは華が住む流魂街東の62地区『日達』の外れにある林で、彼女が毎日の鍛錬をする場所
拙いながらも自分の霊圧が漏れない程度の結界を周りに張ると、木刀を端に置き、手を前に翳す
「まずは、鬼道の練習から!」
そう言うと詠唱を始める
「君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き ヒトの名を冠す者よ 焦熱と争乱 海隔て逆巻き南へと歩を進めよ」
「破道の三十一 『赤火砲』」
掌から飛び出した破道はまっすぐに飛ぶと1本の木に命中し激しい音を立てた
「順調順調っ♪」
華は母と父と年の離れた兄との四人家族だ
兄にも霊力があり、今は死神になって瀞霊廷で暮らしている
休みになると必ず流魂街にある家に帰ってきて自分と遊んでくれる自慢の兄だ
華は兄に憧れ、大きくなったら死神になりたいと打ち明けると、兄は自分が院生だった時の教科書や木刀を華にくれ帰ってくると修行をつけてくれるようになった
といっても兄の休みはそんなに多くないため華は普段こうして自分で鍛錬を重ねているのだ