第5章 隠密機動
『さっきはいきなり逃げたりしてすみませんでした!』
バッと勢いよく頭を下げる。
ここはと言うと普段生活している空き家。
敵意がないと分かった途端、相手が護廷の隊長だったと思い出し一気に冷や汗をかいたのは記憶に新しい。
「気にしないでください。夜一サンが脅かしたのがいけないんスから」
「なんじゃ!ちょっとした遊び心というやつじゃろう!」
「ハイハイ、それより聞きたいことあるんですよね?」
『聞きたいこと、ですか?四楓院様』
おずおずと下げていた頭をあげると見事なまでのしかめっ面の四楓院様。
「か〜〜っ!子どものくせに堅いやつじゃ!
夜一でいい!」
『で、でも…』
四大貴族の当主で護廷の隊長まで務めるような人を気安く呼ぶなんてできるわけがないと思っていたら。
「で!夜一さんの聞きたいことって?」
『ら、蘭!』
こういう時に躊躇ないって羨ましい。
「そうそう!子どもは素直なのが一番じゃ!
そういえば、お主らの名前を聞いてなかったな」
「私は水無瀬 華です」
「私は五十嵐 蘭!」
「華に蘭か!良い名じゃな!
さあ、華も夜一と読んでみぃ!ほれ!」
期待の眼差しで私を見てくる二人。
助けを求めて浦原と名乗った人に視線を送るも、当の本人は何かを考え込むようにしてこちらを見ているだけ。
『うぅ…よ、夜一さん』
「よろしい!ときにお主ら、さっきの虚とは別に三日ほど前にかなり強い虚がこの辺に出たはずなんじゃが…それを倒したのはお主らか?」
三日前と言えばあの時の虚だ。
「三日前だったら、お姉ちゃんが虚を倒した日だよね?」
『う、うん…そうだけど』
すると夜一さんは浦原さんのほうに振り返り、
「やはりな…喜助!お主の勘は当たっとった のぉ!」
「ええ…まぁ」
浦原さんはと言うと、やはりまだ何か考えているようで、曖昧な生返事をした。