第1章 出逢い
少女はそれを僕に差し出した。
『これ、あなたにぴったりだと思って』
そう言って僕に無理やり持たせる。
少女もこれが仕事だ。
花を買わせてから、やっと一日の生活が保証される。
人は皆、そう。
見返りが欲しくて、こういうことをする。
少なくとも、僕が見てきた者は皆そうだった。
「いくら?」
『え?何が?』
こうやって惚けた振りをする。
いい加減、飽き飽きしているんだよ。
「この花の値段」
『値段?なんだ、そんなこと?』
彼女がくすくすと笑う。
『いいよ、そんなもの。わたしは何か見返りが欲しくてしたんじゃないから。ね?』
いつから僕は人の親切心を疑うようになっていたのだろうか。
こんな人だっているんだということを忘れてしまっていたのだろうか。
名を知らない少女から貰った赤に近いピンクの花。
決して今まで貰ってきたような豪華なものではない。
だが、僕には今までで一番美しくて、輝いて見えた。