第1章 出逢い
「この花の名は?」
『ベゴニアっていうの』
聞いたことがない。
「どうしてこの花を僕に?」
僕がそう聞くと彼女は微笑んで答える。
『この花の花言葉はいろんな意味があるんだけど、その一つに、幸福な日々っていう意味があるの。あなたはこの町に浮いた、すごくつまらなさそうな顔をしていたから』
だから、この花を?
「僕は笑っていただろう?」
『あれは愛想笑いでしょう?』
この少女にはばれていたというのか。
「君が初めてだ」
『え?何が?』
「いや、ありがとう。大切にさせてもらうよ」
こんなにも心が満たされたのは、初めてのことだった。