第1章 出逢い
久しぶりに町へ下りてきてみたが、相変わらず皆笑顔で楽しそうに生活していた。
これは、一国の王子としては喜ばしいことなのだが、リリアンとしての僕には羨ましく思った。
『おにーさんっ』
「え····?」
目があった少女がそう言ってきた。
だが、僕のことを呼んでいるのかよく分からなかった。
だから辺りを見回す。
『今、きょろきょろしてるお兄さんのことだよ』
「僕かい?」
僕がそう問うと、少女がくすくすと笑う。
「他に誰がいるの?」
そう言いながら少女が近づいてくる。
『お兄さん、あんまり見ない顔だね』
「·····あ、ああ。ここらの出身じゃなくてね」
一瞬、ばれたのかと思い焦った。
ばれたらただ事では済まされない。
だが、僕の考えすぎのようだ。
僕がそう言うと少女はにこりと笑った。