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宴のあとに(マギ マスルール裏夢)

第1章 本編


謝肉宴。
国中がおもちゃ箱をひっくり返したような騒ぎだ、と名無しは思った。
老若男女誰もが食べて、飲んで、笑いあって過ごす。
ここシンドリアは王であるシンドバッドの性格と理想そのままに具現したような国なんだと理解できる。
自身が門客であるからだろうか、この盛大な宴に参加しながらもどこか冷めた目線で眺めてしまうのが分かった。
ともすると、露出のある謝肉宴の衣装を着ていることが何だか恥ずかしくなってくる。
私だけではない、みな同じような姿で過ごしているのに。
こんなに人々の熱気で溢れているのに、うすら寒さを感じる。
着替えよう、そう思って緑射塔へ向かった。
塔まであと少し、路地を歩いて行くと呼び止められる。
「名無し」
聞き慣れた声。
この国の王である、シンドバッド国王そのものだった。
「王」
あまり会話をする気にもなれずに、彼を一瞥する。
彼はこの宴のご多分に洩れず、今にも鼻歌を歌い出しそうな機嫌のようだ。
「あっちのマギは大いに宴を楽しんでくれているようだが……
名無しはご不満かな?」
「いえ、素晴らしいと思います。
通常なら恐れられる筈の海洋生物の襲撃をパフォーマンス化して
産業、観光に繋げる、さすが王の手腕と言ったところでしょう」
「そういうことじゃない」
そう言うと、ふいに路地の石壁に追い詰められる。
彼の手を振り払おうとすると、両腕を石壁に押し付けられて膝の間を彼の足で割られる。
背中に石壁のひやりとした感触を感じた。
「今日は無礼講だ」
突拍子もないことを言われて目を丸くしてしまう。
彼の顔が私の耳元に近づいてきて、妖しく囁いた。
「つまり、王もマギも関係ないってことさ」
何を、と反論しようとすると至近距離で見つめられる。
深い琥珀色の瞳から逃れられずに見つめ返していると、無遠慮に唇が触れ合った。
そのまま唇を割って柔らかな舌が私の口内に侵入してくる。
逃れようとするが、更に深く口付けられて舌と舌が触れ合った。
否応なしに舌が絡み、望みもしないのに身体は生理的に反応して胸が早鐘を打っている。
「そんな表情もするんだな」
そう言われると恥ずかしくなって、かぁっと頬が赤くなるのを感じた。
もう、酒のせいにしても我慢できない。彼を振り払おう。
力では敵わないので、ルフの流れを操作して、彼の体から魔力を抜き取る。
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