第5章 吐息を華に、恨みを添えて (R18:澤村大地)
ああ、堕ちる。
「っねえ……大地、さん」
「……何、絢香」
「今日は、っ外に出さないで」
彼の肉欲に貫かれて、溶かされて、奈落の底へ。なにも見えない。なにも聞こえない。彼と私しかいない、二人だけの深海。
「……っ本当に、出すぞ?」
「んっ、いいの、きて……っ」
「──……ッ!」
堕ちる。
堕ちていく。
ここから先はきっと闇。これまでとは比べモノにならない、本当の恐怖が待っている。でも、そんなこと、今はどうでもいい。
「好きよ、大地さん……愛してる」
ようやく手に入れた。
やっと、愛し合えた。
今はただ、この幸せに浸っていたい。
「ああ、俺もだ。愛してるよ絢香」
ヴーーーッ
ヴーーーッ
窓際に置かれた大地さんの通勤鞄。延々と、スマホのバイヴレーションが鳴り続けている。
その着信は、きっと──
【了】
吐息を華に、恨みを添えて