第1章 キミは宇宙の音がする (R18:灰羽リエーフ)
「絢香っさーーーん!」
今日も今日とてピアノの練習に明け暮れていた私は、ギクリと肩を跳ねさせて手を止めた。
無音になった放課後の音楽室。
ショパンの名残が残る部屋に、再度リエーフの「絢香さーん!」が鳴り響く。
見下ろせば、笑顔。
天真爛漫な巨人がキラキラの笑顔でこちらを見ていた。腕がもげてしまいそうなくらい激しく手を振っている。
彼、灰羽リエーフは、ともかく目立つ。バレー部というだけで音駒ではちょっとした有名人なのだけれど、日本人離れした容姿がその知名度に拍車をかけていた。
そのリエーフが、である。
猛アタックを仕掛けてくるのだ。いや、あれは猛なんてモノではない。超だ。超アタックだ。私はボールじゃないというのに。
これには正直、参っていた。
あのリエーフときたら、私を見かけるたびに大声で名前を呼ぶし、全速力で駆けてくる。
廊下で、校庭で、食堂で。
ところ構わずハートを散らしまくるものだから、今では私までちょっとした【名物】になってしまっていた。
プライベートがだだ晒しである。