第5章 吐息を華に、恨みを添えて (R18:澤村大地)
現実というものは斯くも残酷で、そして、憎たらしいほどに美しい。
「……ん、絢香」
「あっ……大地さ、ん、好き」
「……っ、……俺も、だよ」
幾千粒の愛を囁いたって、小指に光るダイヤモンドに想いを馳せたって、そんなの全部無意味なのに。
だけど、それでもいいの。
あなたの本当に愛する人が私じゃなくても、その女性(ひと)の薬指にリングが輝いていても、ここにいるときだけは。
「出して、大地さん……っ」
「……っん、──……ッ!」
私の【ナカ】にいるときだけは、この人は私だけのモノなのだから。
好き。好きよ、大地さん。
誰にも渡さない。
たとえ、この身が朽ちようとも、ね。