第13章 夜陰(R18:カレカノ理論Ⅱ)
陽気なパーティーチューンが流れるダンスフロア。ここは、東口の三角形と呼ばれる都内最大級のディスコクラブだ。
「こんなの聞いてないですよ!」
「だって言ってねえもん」
「黒尾さんの詐欺師! ペテン師!」
私は、睨みつけていた。
今宵開催されるオールナイトイベントの主催者、黒尾鉄朗のことを。もうこれでもかと睨みつけていた。
「ただのお手伝い、って話でした!」
「テキーラガールだって立派なお手伝いです。大丈夫だってすげえ可愛いよお前似合ってる似合ってる」
「ほぼ棒読みじゃないですか!」
やいのやいのと文句を垂れる私。
だって騙されたのだ。
この、ペテン師尾鉄朗に。
「せめて露出度を下げてください!」
「はあ? せっかくイイ身体してんだから出さなきゃ勿体ねえダロが」
「セクハラで訴えますよ本当に!」
「ったくうるせえな……衣装チェンジしたけりゃ勝手にしろよ、ただ、木兎が悲しむぞ」
あいつセクシー系大好物だから。
そう言って、黒尾さんはニンマリと笑んでみせた。してやったり顔で。この上ないドヤ顔で。
「どうすんだ? ほれ」
チャリン、と音を立てる鍵。
スタッフ用のバックルームへと続くドアは常に施錠されていて、イベントで使用する衣装や機材なんかは全てそこに保管されている。
「いいのか? お前の大好きな木兎が他のテキーラガールに奪われちまうかもしれねえぞ?」
「〜〜〜……っそれ、は、嫌です」
「はい決まり。んじゃとっとと仕事してこい、もう客入れ始まってんだから」
信じられないほど露出度の高いホットパンツに、生地がほとんどないランジェリーみたいなタンクトップ。
右手には酒瓶。
左手にはショットグラス。
ワンショット500円で提供するテキーラを手に、私は、大きく嘆息して項垂れるのであった。