第2章 嗚呼、愛しのバーレスク!(R18:影山飛雄)
「……あっ、ん……だめ」
歓楽街に、濡れた嬌声が響いている。時刻は深夜二時。裏通りにひっそりと佇むファッションヘルス【SNAKYS】でのひとコマだ。肉欲に身を堕とした者たちが、各々の夜を迎えていた。
「駄目? じゃあ、やめる?」
「……ううん、やめないで」
「ん、よく言えたね……いい子」
暗幕で閉じられたプレイルーム。
その中央のベッドで、及川徹が女の乳房に顔をうずめている。
女の名は絢香。
絢香は、この町で最も名の売れた人気ホスト、及川徹の【お気に入り】だ。
かれこれ半年はこうして肉体関係を続けているが、しかし及川が絢香に身体以上の関係を与えることは、以前として、ない。
「トオルくん……今月、は?」
そう問われて、及川は乳房の頂に這わせていた舌を止めた。わざとらしく瞳を潤ませてみせて「今月?」と小首を傾げている。
「その、一位、だった……?」
「ああ、そのこと……うん。もちろん俺がナンバーワンだったよ」
及川は花の綻んだような微笑を浮かべた。おまけに「絢香のおかげだね」とリップサービスを添えて。
ほう、と絢香が安堵の息をつく。
「よかった……!」
彼女はこころの底からそう言っていた。そうでなければ全てを失ってしまうとでも言うかのように、言うのだ。
よかった。
今月もあなたがナンバーワンで良かった、と。