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(R18) 行かないで青春 (HQ)

第10章  爪先にルージュを塗って (R18:赤葦京治)




 *


 梅雨はどうしてこうなのか。

 延々と降りつづく雨が、肌にじっとりと貼りつくブラウスが、実に不愉快だ。しかしそれ以上に不愉快なモノがある。


「どうしてだ、木葉……!」


 非常勤講師の蒼井。

 私を我欲のままに抱き、嬉々として蹂躙し、最愛に注ぐべきその子種をみだりに放出させていた男。セックスにしか興味がない男。

 私、どうしてこんな男に身体を許していたのだろう。


「俺を捨てるのか? 何故?」


 ああ、つまらない。

 安いトレンディドラマのような安い台詞。俺を捨てるのか。何故。妻帯者の癖に、どの口がそんなことを言えるのか。


「あなたに飽きたんですよ」

「……なんだと?」

「だって、先生は──」


 私の足で射精できますか?
 できないでしょう?

 梟谷学園数学準備室。

 夕闇迫るこの部屋で突拍子もないことを言ってのける私を、呆然と見つめる蒼井は、興醒めしてしまうくらい間抜けな顔をしていた。

 蒼井先生、貴方とはもう終わり。


「私を満たせるのは彼だけなの」


 私にはあなただけよ。
 ね、──京治。






【了】
爪先にルージュを塗って
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