第1章 キミは宇宙の音がする (R18:灰羽リエーフ)
こうして私たちはハッピーエンド、への一歩をようやく踏み出したのだが──
ここでひとつ問題が起きた。
「コラー誰だこんな時間まで残ってんのはー、とっとと帰れー」
ガラリと開かれるドア。キラリと光る懐中電灯。そう、生徒指導の先生による見廻りである。
(う、げっ……コーチ!)
(へ? コーチ?)
(俺たちの! バレー部の!)
これはまさに一大事。
全国出場を果たすほどの強豪バレー部に属する彼と、海外留学を間近に控えた私。お互い学舎(まなびや)での情事を知られるワケにはいかない。
なんたって、私たちには輝かしい未来が待っているのだ。
「絢香さん! 走ろう!」
「……うんっ!」
差し出された手。重なる掌。
信じられない速さで私の手を引く背中は、なんだか以前よりも逞しく思えた。
私たちの恋路はまだ、スタートラインを越えたばかり。夜の校舎に響く足音が、流れる景色と共に、過ぎていく。
【了】
キミは宇宙の音がする