第4章 水仙姫《1》
月明かりが照らすだけの薄暗い部屋に濡れた音が響いた。
優しく抱きしめられて、頭を掬われる様に手を添えられる。
まるで恋人のように優しく丁寧に触れるエルヴィンの指先にぞくりと快感が背を走る。
柔らかく触れる唇にうっとりと身をゆだねる。
唇で唇を挟むように甘く愛撫されると広い背中に回した腕に力が入る。
軽く吸われるような短いキスを繰り返し、しっとりと濡れた唇から淫靡なリップ音が響いた。
長身のエルヴィンからのキスは真上から降ってくるような印象を受ける。
ペロペロと唇を舐め上げられてくすぐったい。
「ふふっ」
キスとキスの間に笑いが零れる。
笑った拍子に開いた唇を割って熱く濡れた舌が割り込む。
「どうした?」
私の舌を絡め取りながら器用に話すエルヴィン。
薄目でお互い見つめ合いながら交わす口付けに頭が痺れる。
ちゅ、と音を立ててひとつキスをしてエルヴィンの首筋に子猫のようにすり寄る。
「やっぱり隊長とのキスは気持ち良いなぁって」
「それは…光栄だ…」
にっこりと紳士的な笑顔で微笑むと、私のあたまを撫でる。
少し冷えた手で頬を挟まれてまた口付けられる。
口内を舌が掬い上げて私の舌を絡め取る。
舌を吸われたり出し入れされたり、熱い吐息と巧みな舌技に思考がとろけていく。
許容できなかった唾液が口の端から溢れて顎を伝う。
始めは熱いそれが首を通る内に冷えて鎖骨を濡らす。
相変わらず濃厚なキスに期待が高まっていく。