第4章 水仙姫《1》
───コンコン
ノックをして室内に滑り込む。
「誰だ」
お目当ての優秀な方は書類から視線を外さず鋭い声を飛ばしてきた。
男性としては小柄な体型、眉間には深い縦皺がくっきり。
人類最強と言われるリヴァイ兵長だ。
(どんなえっちするのかしらっ)
にっこりと営業スマイルをしながら兵長の近くまで歩み寄る。
机には書類の類いが整然と詰まれ、リヴァイ兵長の神経質さを表していた。
机に両手をついて、腕で胸を挟んで強調しつつ、軽い前傾姿勢。
「特設慰労部隊兵長のエルミです。お仕事しに来ましたっ」
リヴァイ兵長の顔には疑問符が。
不機嫌に眉を寄せて顎をしゃくって無言で話を促す。
筆は止まった。
(上出来っ)
「上層部より指令が入りまして、特別優秀なリヴァイ兵長の慰労を任されてこちらに参りました。早速任務に入りたいのですがよろしいでしょうか?」
「必要ない」
「………はい?」
定型文とはいえ、被せるように答えられた。
しゃべりながらだったので、上手く聞き取れなかったのだけれど、今この人「必要ない」って言わなかった?