第3章 百日紅の幻想
くるりと回れ右して部屋を出ようとした。
そう。出ようとした、だけだった。
出られなかった。
信じられないスピードで扉を蹴られてドアノブが手の平から逃げていった。
「仕事を放棄するのか」
ぞくり。
首筋に氷を当てられたかと思った。
抑えた声に冷たい殺意が見えた気がする。
「別にオレは毎回縛り上げて犯してやっても構わんぞ」
「……っ!!」
スルリ、と首に指が回る。
リヴァイ兵長の指がするすると喉元から顎までをなぞり上げる。
逃げるように顎が天を向く。
指の触れた跡がざわざわする。
「で、どうするんだ?この前みたいにされるか、努力して自分も気持ちよくなるか。好きな方を選ばせてやる」
「……っ」
耳に直接囁き込まれて、反射的に身体が逃げる。
どうやらそれがお気に召さなかった様で、すい、と熱が離れた。
離れたかと思った直ぐ後に首に何かが回る。
「…な……に?」
手でなぞると革と金属の感触。
(首輪…っ!?)
気付いた時はすでに遅く、ぢゃりっと鎖が重い音を鳴らして私は引き倒されていた。