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【V6短編集】俺だけに見せて【裏有】

第1章 口実。【森田剛】


ピンポーン

ピンポーンピンポーン

ピンポーンピンポーンピピピピピ

「落ち着けよ!!」
「おはよー」

インターホンにイラッとしつつもドアを開けると、いつもの笑顔がそこにある。
俺はさっきまで感じていたイライラはどこへ行ったのやら、一気に気分が安らいだ。

「おはよ」
「おじゃましまーす」

当然のように部屋に入り、当然のようにエプロンをし、当然のように俺の部屋のキッチンに立つこいつは、決して彼女ではない。
昔からの友人だ。

は、高校生の頃からの付き合いで、俺の知ってる限りでは、高校生の頃から男と付き合った事がない。
多分、男には好かれるタイプだと思う。
実際俺の友人数名も、こいつの事を密かに想っていた。
本人に聞いてもはぐらかされるだけなのでもう聞かないが、とは言え、別に女が好きだとかそういうものでもないらしい。

「今日はなにー?」
「サニーサイドアップ」
「さに……え?」
「サニーサイドアップ」
「サニー……サイド、アップ」
「うん!」
「で?どこの料理?」
「え、目玉焼きだよ?」
「最初っからそう言えよ」

にしし、と歯を見せて笑ったは、手際よく朝食を作り始めた。

「なぁ、別に無理して毎朝来る必要ねぇんだぞー?」
「んうー?無理してないよー?それに放っておいたら剛の食生活、最悪だから」
「……そんなに俺の事心配?」

そう言って、さりげなく後ろから抱きついてみる。

「心配心配」

こいつはやはり声色ひとつ変えずに、そうあしらう。

の作った朝食を二人で食べ、は片付けを済ませると仕事に向かう。
俺も仕事に向かうため、準備を始める。

でも、俺達は付き合っていないし、はそんな気もないのだろう。
俺は、そんな日々に安心と不満、複雑な気持ちを持っている。


「ねえ、!」
「ういー?」
「今度会社の飲み会があるんだけど、来るよね?」
「その日は……予定が入る予定なんだけど」
「その入る予定の予定を潰しておいてね」

同僚に笑顔で釘を刺されると断れない。
私は泣く泣く、了解、と返事した。


帰りにスーパーに寄ると、若い女の子たちの会話が聞こえてきた。
その一つの人名に、私の耳が反応する。
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