第4章 オアシスの異変
次の日、キャラバン隊が向かったのは、オアシス都市のデリンマーだった。
「よーし、稼ぐぞ!! 」
デリンマーに入るなり、ライラは気合いを入れて声を出した。
デリンマーは、この辺りのオアシスでは、大きい都市だ。気合いを入れたくなる気持ちもわかる。
ライラを見習わなきゃと、ハイリアも気を引き締めるために、静かに拳を握りしめた。
「ライラったらはりきっているわね! 」
露店で売る荷物を両腕に抱えながら、サアサがクスクスと笑った。
「ライラがいれば、きっと今回の露店も大盛況だよね! 」
「嬉しいね、ハイリア! そう言ってくれるってことは、お前もしっかり手伝ってくれるんだろう? 頼んだよ! 」
ニコニコしながらライラが、ハイリアの背中をパシンと叩く。
「もちろん、頑張るつもりだよ! 」
期待されていると思うと、急に緊張してきてしまってなんだか笑顔がこわばった。
けれど、ライラが一緒なら、きっと大丈夫なはずだ。
「モルジアナは露店に出るの久しぶりだな! 今日はお前もよろしく頼むよ! 」
ライラは、モルジアナの背中も軽く叩いた。
「……はい、頑張らせていただきます」
あいかわらず、モルジアナの表情は硬かったけれど、彼女もぐっと手に力を込めて握っているのがわかって、ハイリアは静かに笑みを浮かべた。
今日は四人でバザールの露店にでる。
考えてみると、四人そろって露店に出るのは初めてのことかもしれない。
最近のモルジアナは、もっぱら荷の運搬を任せられることが多かったし、交代で順番に三人で露店に出ていることばかりだった。
こうやって露店までの道を歩きながら、荷物を運ぶなんていつものことなのに、なんだか特別な日のように思えて不思議だった。
「そういえば、もう半年がたつのね。ハイリアとモルジアナが来てから……」
サアサが歩きながら話し始めた。
「ハイリアと会った時は、ウータンから次の街に行く途中だったわね。道に急に飛び出してきて、馬車を止めたかと思ったら、乗せてくださいなんて言うから、本当にびっくりしたわ」
サアサに言われながら、ハイリアはキャラバンに入ったときのことを思い出した。