第27章 緋色の夢 〔Ⅻ〕
近くで見れば見る程、ハイリアの魔法はめちゃくちゃだ。
こんなふざけた魔法の使い方をする奴なんて、今まで見たことがない。
身に宿るマゴイを糧に魔法を起こすだけならば、魔導士なら誰でもやっていることだろうが、あいつは杖もなしに、マゴイを直接身体から放って魔法を操りやがる。
しかも魔法の命令式をばらつきなく、正確にルフへ伝えながらだ。
それ自体がそもそもおかしいというのに、ハイリアは意識もないのに周囲のルフをかき集めて、魔法に必要となるルフに干渉している。
ざわめくルフたちは、ハイリアのマゴイに感化されているのか、他のルフへも干渉し合いながら同一の魔法を引き起こしているようだった。
ルフ同士をつないで魔法を体現させるなんて、そんなもん自然現象そのものみたいなもんだ。
── ふざけた魔法を暴走させやがって! あいつ、魔法は使えなくなったんじゃねーのかよっ!?
夢で見たバカ殿と似た男の話の通りなら、ハイリアはマゴイ操作が行いやすい体質に変えられたことで、暴走する魔法を抑える力を得た代わりに、魔法を扱う力を失ったようだった。
つい最近までマゴイをコントロールできていたあいつが、今頃になって魔法を暴走させるなんておかしいだろう。
── あいつに何が起こってる……!? あの身体に絡みついてる闇は何だ?
探り見たハイリアの内部では、闇を灯す八芒星が黒く輝いていた。
胸に宿るその闇がハイリアの白い身体の表面にまで湧き出して、巻き付くように絡みついている。
よく見れば、あいつのルフを内側から黒く染め変えているのか、漆黒に触れたルフの半分がすでに闇に堕ちていた。
残りはどうにか堪えているようだが、時間の問題といったところだろう。
あの呪印、やはりハイリアには効きすぎるらしい。
「バカ、まだ堕ちるんじゃねーよ! 」
── この魔法の暴走も、あの呪印の影響か!?
それにしてはマゴイの色がおかしい。あいつのマゴイは白のはずだ。
あの青いマゴイはなんだ?
なんであいつのマゴイに違う色が混じっている?
青……、Ⅱ型の魔法……、氷……。
考えてハッとした。
── おい、まさか……あれ、俺のマゴイか……?
何かの拍子に、あいつの身体に混じり込んだのかもしれない。
そのせいで、マゴイが乱れているのだろうか。