第9章 「シン」という男
「でも、本物のアリババくんをどうやって捜そうかな? こんなに広い国だし……」
「とりあえず、首都であるこの街には、彼も一度は来ているだろうし、近くの宿を当たってみた方がいいと思うわ。何か伝言を残しているかもしれないし、運がよければ、彼を知っている人も見つかるかもしれない」
「そうか! すごいね、ハイリアさん。じゃあ、僕は近くの宿を当たってみることにするよ! 」
「待って、アラジン! 」
ベッドから降りて、さっそく外へ向かおうとするアラジンを、ハイリアは止めた。
「知らない町だし、一人で行動しない方がいいわ。内紛の影響で、街も荒れているみたいだから、三人で行動しましょう」
このホテルに来るまででも、バルバッドの荒廃は目に見えて明らかだった。
首都の市街地だというのに、路上に座り込むスラムの住人が目立っていた。内紛で市民の落差が拡大しているのだろう。
いくらアラジンが強いとはいっても、そんな街を小さな少年一人で歩かせるのは物騒だ。
「街へ出るのでしたら、船も調べに行きませんか? アリババさんがもし、船で別の島に渡っていたら、何かわかるかもしれません」
モルジアナが言った。
「そうだね。ついでに、私たちの乗る船もみておこうか」
日が明るいうちに、できるだけやってみようと、ハイリア達はホテルの外へと出て行った。