第19章 緋色の夢 〔Ⅳ〕
何を偉そうなことを言っているのかと思った。
どうせまた、八つ当たりでもしてくるに決まっている。
力業で降参させようとしたって、絶対に屈してなんかやるものか。
黙りを決め込んで、視線を逸らしていたハイリアの首筋を、ジュダルの指がゆっくりと撫で上げた。
そのくすぐったさに思わず肩が上がる。
首筋に沿って上へと移動してきたジュダルの指が耳に触れ、こそばゆい、ぞわぞわとした感触に身がよじれて、嫌になった。
何をするのだと思ってジュダルを睨み付ければ、彼はこちらが反応を示したことで、面白そうに笑みを浮かべた。
「どうした? ハイリア」
赤い眼差しが、何か言えと見下ろしていたから苛立った。
ここで何か話したら、こちらの負けだ。
すぐに、ジュダルから顔を背けて黙り込む。
顔を背けるなり、ジュダルはすぐにまた耳元へ触れてきた。
ゆっくりと触れた彼の指先が、耳の形に沿って弱く這いながら、下から上に向かって移動する。
撫で回される感触に、ぞくぞくとする刺激が走って身がよじれた。
よくわからない嫌がらせに耐えていると、体がビクンと跳ねた。
くすぐったさに出そうになる声を堪えて、息が詰まり、息苦しくなる。
止んだ感覚に、溜め込んでいた吐息が漏れると、ジュダルが、くっくっと笑った声が聞こえた。
「声出していいんだぜ? そしたらやめてやるよ」
さらさら謝る気がないジュダルの態度に、苛立ちが募った。
ここで折れたら負けだと思って、ハイリアは答えなかった。
「へぇ~、じゃあ遠慮なんてしないからな。声が出たらおまえの負けだ」
耳元で言われたジュダルの吐息に、また背筋がぞくりとした。