第4章 オアシスの異変
「ハイリア、見るな。あれは盗賊なんかよりもずっとタチが悪い……目をつけられたらとんでもないんだ。あいつに関わっちゃいけない! 」
真顔でライラが言った。
気づけば露店の裏には、サアサとモルジアナの姿もあった。
きっと二人もライラに店の裏に隠れているように誘導されたのだろう。
奴隷商人というのは、金になると思えば罪もない人をさらってでも奴隷にする恐ろしい行商人だ。
身寄りのない者や、ワケありの者が集う、キャラバンから人がさらわれることも多いと聞く。
ライラもそれを恐れたのだろう。
ハイリア自身も、恐ろしい目にあったことがある。
この白い髪と、白い肌は珍しいらしいのだ。だから、何度か奴隷商人には襲われたことがあった。
今まで運良く奴隷にならずにすんでいるが、狙われやすいということは、自分がよく自覚している。
だから、ライラの言いつけを守り、露店の裏に座り込み、耳障りな音が通り過ぎるのを待った。
ジャラリ、ジャラリという音は、目を逸らした奴隷達の映像を何度も脳裏に映らせた。
なんで奴隷なんてものがあるのだろうか。
嫌な気分になっているのは、サアサとモルジアナも同じようだった。
目を伏せているサアサも、表情を硬くしながら、拳を振るわせているモルジアナも、悲しい表情をしているのは、みんな同じだった。