第3章 上杉謙信 謙信誕生祭~抑えきれない感情~
いくつかの荷物を抱え、なおが廊下を進む。
女中「あっ、なお様、落とされましたよ!」
すれ違った女中に拾ってもらい、礼を言うとまた歩き出す。
「・・・・・・」
考えるのは謙信の事だった。
昨晩の、あの・・・
「うぅ・・・」
思い出しただけで顔が熱くなった。
荷物を抱え直し、何度も深呼吸をしてから、
「秀吉さん、なおです」
声を掛けると襖が開かれる。
秀吉「なお、よく来たな」
優しいその表情になおも微笑み、
「信長様からのお届け物、持ってきました」
秀吉「ありがとう」
受取り、その場で簡単に目を通す。
秀吉「茶でも飲んでいけ」
「ありがとう、でもまだ用事があるから、私はこれで」
秀吉「手伝おうか?」
なおの抱える荷物を見て、秀吉が手を伸ばす。
秀吉「どこに持って行・・・・っ」
「大丈夫だよ、軽いし、すぐ終わるから」
秀吉「・・・お前」
「ん?」
目の前で固まる秀吉に、なおは首を傾げた。
秀吉「いや、なんでもない」
なおが部屋を出て行くと、そっと襖を閉める。
秀吉(・・・誰だ)
秀吉の頭の中で、たくさんの顔が浮かんでは消える。
「政宗、入っていい?」
政宗「なお、よく来たな」
部屋に通されると、風呂敷を解く。
「頼まれたところ以外も少し直しておいたから、確認してもらえるかな?」
着物を受け取ると、
政宗「お前の腕は信用してるから大丈夫だ。それより、折角来たんだ、茶でも飲んでけ。菓子もあるぞ」
「え、いいよそんな。届けに来ただけだし」
遠慮するなおの手を引き、無理やり座らせる。
政宗「一杯くらいいいだろ。付き合えよ」
政宗手作りの菓子を堪能したなおが、笑顔で部屋を後にする。
政宗「・・・昨日なおは誰と居た?」
なおが直してくれた着物を、じっと見つめたまま、暫し固まる。