第3章 日向順平
「ごめんね! 日向君待った?」
「いや、俺も今来たとこ……って、なんでお前がいんだよ!? あぁ?」
「いや~、千穂が日向君に買い物誘われたって嬉しそうにっ」
「も~!! 俊!! 違うでしょ! 俊が俺も買いたいものあるからって着いてきたんでしょ!!」
「あ~……そうだったかも♪ てなわけで、しゅっぱーつ♪」
「…………」
伊月と千穂は俺なんか存在しないかのように二人の世界で盛り上がっている。
今日こそは千穂に気持ちを伝えようと思っていたのに……これではその計画も水の泡になりそうだ。
「はぁ……」
「日向君、元気ないみたいだけど……具合悪いの?」
前を歩いていた千穂が俺の額に手を当てる。
俺よりも体温が少しだけ低い彼女の手のひらはなんだか心地いい。
「う~ん……熱はないみたいだけど……ほんとに大丈夫?」
「あ、あぁ。ちょっと考え事してただけだから大丈夫」
俺よりもほんの少し小さい千穂から見上げられる。
少々開放的過ぎる胸元から視線をそらすと伊月と目が合う。
あいつ、今すげぇニヤついてた気がする。