第2章 プロローグ
暗い路地。意識していないと通りすぎてしまいそうなこの細い道の奥に、男の姿はあった。民家の裏に当たるここには街灯もなく、月の光も届かない。
眼を凝らさないと表情も見えないような暗がりの中、男はポケットから何かを取り出した。
「ヒヒ…」
取り出したビニール袋から、さらに新聞紙にくるまれた物体を取り出し…無造作に転がす。満足そうに、狂気じみた顔で笑った男の肩を、叩くものがいた。
「おい」
「ひぃっ!?」
驚愕に腰を抜かしたのか、地べたに座り込む男。ガタガタと震えだした男を見て、ふうとため息をついたのは、アキだった。
「お前だな?野良猫やらを悪戯に殺して回ってるっていうのは」
「ち、ちが…!」
「ならそれ…食ってみろ」
アキが顎をしゃくり、男が先ほど落とした物体を指す。地面に転がるそれは、魚のすり身を団子にしたもののようだ。
「違うんなら、食っても問題ないよなあ?」
その言葉に、観念した男の頭が項垂れた。