第9章 地獄篇 R18
宵闇、月明かりの下
夜が更けるまでの事はまるで覚えてない。
味のしない食事をし、目の前で繰り広げられる会話に適当に相槌を打ち、
いつもよりやや丁寧に体を洗い。
単なる月夜デートなら後で恥ずかしくなるなぁ、と苦笑しながら。
何よりもこのどきどきを白澤様に気取られてはいけない気がして
さりげなく「おやすみなさい」を言い、逃げるように部屋へ籠る。
布団の上に座り込み、昼間の事を思い出し、胸が熱くなる。
考えれば考えるほど、鬼灯様への熱が上昇していく気がした
どれくらい経っただろうか
周囲の静まり返った気配の中、少しだけ扉を開ける。
白澤様は寝入ってしまったのだろうか、何の物音もしない。
音を立てないように洗面所へ向かい、髪をとかす。
今の私ができるオシャレなんて、この程度しかない。
それでも鬼灯様は好いてくれているんだろうか。
不安を打ち消すように、鏡に一度笑顔を作ると、私は玄関の扉を開けた。
月明かりが周囲を照らしているので、歩くには苦労しないけど
兎に角誰かに見つからないかと、逃げるように門へと向かう。